産業医の資格は主に内科の医師中心に取得する方を多くみますが、皆さんは産業医の「実際」を知っているでしょうか?
常勤をしながら産業医をしたり、あるいは産業医一本で働いている医師も少なくありません。
今回は産業医の業務について、簡単に解説してみようと思います。
- 産業医とはなにか?
- 産業医が必要とされる事業場とは?
- 産業医の資格をとるためには?
- 産業医の仕事内容は?
- 産業医の給料の相場は?
- 産業医の求人の探し方は?
- 産業医の求人やバイトを探す上で知っておくべきことまとめ
産業医とはなにか?
企業が健全な経営活動を行うためには、労働者が健康であることや安全に働くことができる環境が整備されていることが必要となります。
産業医とは、事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師を言います。
産業医がいることにより、企業はどんどん活力を増し、成長していくことができるのです。
産業医が必要とされる事業場とは?
事業者は、事業場の規模に応じて、産業医を選任して労働者の健康管理等を行わせなければなりません。
また規模によって、選任しなければならない産業医の医師の数も増減します。
詳細については、以下のように定められております。
1. 労働者数 50人以上 3,000 人以下の規模の事業場
→ 1名以上選任
2. 労働者数 3,001 人以上の規模の事業場
→ 2名以上選任
一つの事業場における労働者数が50人〜999人の場合、産業医は嘱託(非常勤)でもよいとされています。
一方で、産業医としてその事業場における産業医の業務に従事することができる専属産業医が必要となる場合もあり、
- 常時 1,000 人以上の労働者を使用する事業場と
- 次に掲げる業務(※)に常時 500人以上の労働者を従事させる事業場
では、その事業場に専属産業医を選任しなければならず、常時3,000人を超える事業場は専属産業医を2人以上選任する必要があります。
※ 労働安全衛生規則第13条 第1項 第2号
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務引用:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103897.pdf
産業医の資格をとるためには?
産業医になるためには、事業場において労働者の健康管理等を行う産業医の専門性を確保する必要があります。
そのためには医師であることはもちろんですが、さらに専門的医学知識について法律で定める一定の要件を備えなければなりません。
厚生労働省令で定める要件を備えた者としては、労働安全衛生規則 第14条 第2項に次のとおり定められています。
- 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する者(法人に限る)が行うものを修了した者
- 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、その大学が行う実習を履修したもの
- 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
- 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常勤勤務する者に限る)の職にあり、又はあった者
- 前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者
ちなみに日本医師会認定産業医は、この中では1に該当することになります。
日本医師会の産業医基礎研修を修了する方法
日本医師会は、産業医の資質向上と地域保健活動の一環である産業医活動の推進を図るために、所定のカリキュラムに基づく産業医学基礎研修50単位以上を修了した医師、または、それと同等以上の研修を修了したと認められる医師に申請に基づき日本医師会認定産業医の称号を付与し、認定証を交付します。
この産業医学基礎研修は各地の医師会などが主催していますので、HPなどを参照するようにしましょう!
産業医科大学の産業医学基礎講座を修了する方法
産業医科大学が開催する産業医学基礎講座を受講し、履修認定を受けることで「産業医学基本講座修了認定書」が授与されます。
この「産業医学基本講座修了認定書」を授与されることにより、ようやく日本医師会認定産業医に申請ができるようになります。
この産業医科大学による講座は場所が限定されており、産業医科大学と東京の2カ所でしか開催されていません。
講座が開催される期間は、産業医科大学と東京では異なります。
また現在はCOVID-19によって講座自体が開催中止になっていたりする場合もあるので、必ず開催するかどうか確認するようにしましょう。
労働衛生コンサルタント試験に保健衛生区分で合格する方法
医師は医師免許を持っているため、労働衛生コンサルタントの受験資格を持っています。
試験の内容は筆記試験(労働衛生一般、労働衛生関係法令、健康管理)と口述試験からなります。(ただし医師の場合、筆記試験は労働衛生関係法令のみとなります。)
ちなみに日本医師会の「産業医学講習会」、もしくは産業医科大学の「産業医学基本講座」を修了している場合は、なんと筆記試験の全科目が免除されます!
ちなみに合格率に関してですが、これは医師であっても30%程度となっており、かなり厳しいものになっています。
口述試験は実際の場面を想定したケーススタディ形式の出題が多いとのことで、実務経験がないと解答を捻り出すのが難しいということが理由となるようです。
産業医の仕事内容は?
産業医の仕事に関しては、医学に関する専門的知識を必要とするものとして、労働安全衛生規則 第14条 第1項に規定されています。
- 健康診断の実施、および結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
- 面接指導、必要な措置の実施、結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
- 心理的な負担の程度を把握するための検査の実施、面接指導の実施、結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
- 作業環境の維持管理に関すること
- 作業の管理に関すること
- 労働者の健康管理に関すること
- 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
- 衛生教育に関すること
- 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること
また、労働安全衛生規則 第15条 第1項では産業医の職場巡視等について、
産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害なおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない
と定めています。
また平成29年の労働安全衛生規則 第15条の改正により、事業者から産業医に所定の情報が毎月提供される場合には、産業医の作業場の巡視の頻度を、毎月1回以上から2か月に1回以上にすることが可能となりました(巡視の頻度変更には事業者の同意が必要)。
産業医の給料の相場は?
産業医の給料の相場は、
- 嘱託 or 専属
- 業務の内容
- 企業規模
によって大体の額が変動する傾向にあります。
嘱託産業医の給料の相場
嘱託産業医の報酬については、公益社団法人 日本橋医師会が「産業医報酬基準額について」という資料を公開しています。
同会所属の嘱託産業医にヒヤリングを行い、基本報酬の月額を集計した結果となっています。
嘱託産業医 基本報酬額
労働者(人) 基本報酬月額(円)
〜49人 75,000~
50〜199人 100,000~
200〜399人 150,000~
400〜599人 200,000~
600〜999人 250,000~
※ストレスチェックや健康診断の実施、予防接種等の費用は含まない。
※労働安全衛生法の産業医業務には該当しないストレスチェックの実施者や共同実施者を、産業医として選任している医師が担当する場合の費用は、実施者の場合は 20 万円程度、共同実施者の場合は 10 万円程度が妥当と考えられる。
※ストレスチェックの面接指導の実施する場合は別途追加費用を必要とする。また、有害業務等への対応等の産業医業務の内容や、医師の産業医学の専門性に応じて基本報酬額に相当の加算を行うことが妥当と考えられる。引用:https://www.nihonbashi-med.com/topics/topic_file32_1460600097.pdf
傾向としては「従業員の数が多くなるにつれ、産業医に支払われる給与も多くなる」と考えられます。
従業員数が多くなればなるほど、面談や職場環境整備などに費やす時間も増えることが理由かと考えられます。
専属産業医の給料の相場
専属産業医の場合は「年間300〜400万円 × 週○日」が相場と考えられます。
すなわち、週1勤務ならば300〜400万円程度となりますし、週4勤務であれば1200〜1600万円程度となります。
産業医の求人の探し方は?
産業医の求人はバイトも含め、探し方がいくつかあります。
医師会を通して紹介をもらう
産業医の仕事は、地域の医師会を通して企業を紹介してもらうことがあります。
医師会はその地域の産業医案件を紹介してくれるため、近隣で産業医の仕事を探したい場合に効率的な方法となります。
特に産業医を探しにくい地方在住などの場合は、都市圏などよりも探しやすい方法になってくるかもしれません。
医療機関を通して紹介をもらう
医療機関を通して産業医の仕事を紹介してもらう場合も、基本的には医師会を通して産業医の案件を紹介してもらう場合と傾向は同じになります。
その地域の産業医案件を紹介してくれることが多くなるため、こちらも近隣で産業医の仕事を探したい場合に効率的な方法となります。
特に産業医を探しにくい地方在住などの場合は、候補の一つとして考えておくのが良いでしょうが、そもそも自分の所属している医療機関や関係のある医療機関が産業医の案件に関連が低い場合、仕事はあまり回ってくることはないでしょう。
医師向け求人サイトで紹介してもらう
医師転職サイトやバイト求人サイトでは、通常の診療課の求人案件はもちろん、産業医の求人案件を紹介してもらうこともできます。
医師転職サイトのエージェントは勤務先となる企業の雰囲気などを調べてくれたり、企業との就職活動や面接対策の相談などにも応じてくれます。
もしも産業医として働くのが初めてで不安な先生も、産業医の内情などにも詳しいエージェントがしっかりと相談に乗ってくれるので、気軽に産業医として働くことができるでしょう!
通常の医師としての業務をこなしながら転職やバイト探しに奔走するというのは、なかなか大変な作業です。
ぜひこのような無料のサービスを利用して、円滑な仕事探しを目指しましょう!
産業医を探すおすすめの医師求人サイト
が上から順におすすめ!
産業医の求人やバイトを探す上で知っておくべきことまとめ
産業医の求人を探す上で知っておくべきことについてまとめました。
産業医としての働き方は、医療機関で勤務している医師の働き方と大きく異なります。
資格の取得の仕方、給与の平均、バイト求人の探し方などについて知っておくことで、産業医として働くビジョンを固めておきましょう!