専門医や認定医などは、キャリアの中でも一つの区切りとされることが多いのですが、実際に持っていることで直接的な恩恵を感じたことがある先生は少ないのではないでしょうか?
今回はそんな専門医や認定医は、果たしてフリーランスの医師の場合は必要なのか?不要なのかを考察してみようと思います。
- 専門医・認定医とはなんなのか?
- フリーランスの医師と専門医・認定医
- 現役フリーランス医師のおるとの考察
専門医・認定医とはなんなのか?
まず専門医や認定医とは一体なんなのでしょうか?
日本専門医機構のHP内で専門医については、
それぞれの診療領域における適切な教育を受けて、十分な知識・経験を持ち患者から信頼される標準的な医療を提供できるともに、先端的な医療を理解し情報を提供できる医師
と定義が記載されています。
認定医も同様に、認定医としての知識があることを学会に認められているという証となります。
つまりまず大前提として、専門医や認定医というものはあくまでも自分の能力の証明であって、ポイントカードのように持ってるだけでお得なものだから取得しましょう!なんてものではないということは理解しておく必要があります。
なので本来ならばメリット・デメリットで語るのも、少々おかしな話ではある気がします 笑
フリーランスの医師と専門医・認定医
それではここからは持つこと、持たないことに対するメリットについて考察してみましょう。
フリーランスの医師が専門医・認定医を持つメリット
転職の際に自身の知識量の証明となる
転職で面接などを受ける場合、専門医や認定医を持っているということは、少なくとも専門医試験などを突破したり、認定医講習を受けたという実績があるというように評価されます。
「専門医試験を受けていなくても、臨床経験は長いから同等の知識量はある」というふうに考える先生もいるかとは思いますが、少なくともおるとは同等とは思いません。
もちろん実臨床で学ぶことも非常に多いのですが、専門医試験を受けるにあたって勉強した知識は、基礎や専門性の高い領域などについては通常診療業務だけでは遭遇できないものも多くあり、確実に知識のベースラインを引き上げてくれたものであったと思います。
転職やバイトで給与や待遇が上がる可能性がある
専門医を持っていても金にならない!という意見をたまに目にしますが、実際どうでしょうか?
実は医師転職サイトやバイト求人サイトを見てみると、専門医の場合は給与が上がるという求人案件が実は結構あります。
専門性が高い資格を持っている場合はそれ自体が集患に繋がったり、あるいは資格があることにより加算がつく、なんてこともあります。
このような場合はさらに給与に関しての交渉がやりやすくなり、結果として多くのお金を手にすることができることでしょう。
患者に対しても自身の知識量の証明となる
専門医や認定医などを持っていることは、患者にとっても重要です。
例えば「◯◯の専門の先生がいるってネットで調べて来院しました」なんてケースに遭遇したことがある医師も少なくないでしょう。
また、他院の医師も「あそこの医療機関には専門医がいるので紹介しやすい」という認識を持ってくれるかもしれません。
専門医を持っているというだけで患者の安心感につながることもあります。
フリーランスの医師が専門医・認定医を持たないメリット
資格の取得や更新にかかるお金が節約できる
専門医・認定医の取得や更新には地味に多額のお金が必要になります。
- 医学書
- 問題集
- 学会年会費
- 単位取得のための学会参加費
- 受験に必要な単位取得料
- 受験料
- 登録料
- 更新のために必要な単位取得料
......などなど、まだまだあげればキリがありません。
専門医や認定医を取得しないことを決意すれば、これらのお金を浮かすことができます。
計算すると意外と馬鹿にならない額なので、ぜひ自分の所属学会と照らし合わせて計算してみましょう。
単位を集めるために費やす時間を節約できる
専門医・認定医取得や更新のためには、必要となる単位数が設定されており、学会などに参加して単位を集めるということが必要となります。
しかし専門医や認定医を放棄すれば、単位を集めに奔走する必要はなくなり、必然的にその分の時間がフリーになります。
時間は有限であるため、自分が有意義であると思えることにしようできるのは、当然メリットであると言えるでしょう。
フリーランスの医師が専門医・認定医を持つデメリット
学会参加などのために仕事を休まなければならない場合もある
前述した通り、資格の取得や更新のためには学会などに参加をして単位を取得することが必要となります。
フリーランスとして働く場合、場合によっては土曜日などの勤務を休んだ上で学会に参加しなければならなくなることもあるでしょう。
これによって、純粋に丸1日分の日給が減ってしまうことになります。
ただし有給を消化することができれば、給与の減少は回避することができます。
専門医維持がフリーランスの働き方の足枷となる場合がある
例えば麻酔科の専門医更新要件のように、「同一施設で週3日以上勤務」などの文言がある場合、非常勤勤務をメインとするフリーランスの働き方との相性は非常に悪くなります。
この様な場合は、働き方か資格かどちらかを放棄する決意をしていただく必要があります。
個人的には常勤週3日+非常勤の方が、フリーランスよりは収入の面で安定性が高いとは思います 笑
フリーランスの医師が専門医・認定医を持たないデメリット
自分の実績を証明しづらい
前述した通り、専門医や認定医を所持しているということは「少なくともこのレベルの知識はある」という証となります。
逆にいうと何も持っていない人間は、自身の能力を面接でなんとか相手に伝えないといけません。
自分で自身の能力のアピールをするというのは非常に難しく、「この医師はやたら自分の能力を過大評価しているのでは......」とも捉えかねられません。
ちなみにこれの打開策としては、医師転職サイト・バイト求人サイトのエージェントに伝えてもらうという手法があります 笑
とにかく、実績などは採用する側としても一つの判断材料とすることは多いので、正確に伝えることができる様にするべきでしょう。
なぜ資格を持っていないのか不審に思われる
これは特に専門医に言えることですが、現在は「若手は専門医をとって、初めて専門科の医師としてのスタート」や「専門医を持っていて当たり前」という風潮が強くあります。
この状況で専門医を持っていない医師は、面接等において「なぜ専門医を持っていないのか」と言う理由を説明できなければなりません。
もちろん不評だと思う理由は、人それぞれしっかりとあると思います。
しかし自分にとって不要であったとしても、医療機関側としてはある程度は重要視してきます。
「海外に留学していたため専門医の取得が遅れた」などの正当な理由があれば医療機関側からの理解も得やすいでしょう。
しかし、「お金がもったいないので取得しなかった」などと言う個人的な理由は、雇用する側の医療機関にはあまり理解されないばかりか、「この医師はちょっと変わった考え方なんだな」というふうに思われてしまったり、「 金の事しか考えていないだな」と捉えられてしまう可能性もあります。
給料が高い案件が少ない
転職やバイト求人案件は専門性が高くなればなるほど、給与のベースも上がることは言うまでもありません。
そのため、専門医と非専門医で明確な給与の差がつけられているところもあるほどです。
誰でもできる様な案件では給与の差があることはほとんどありませんが、逆に給与自体が低く設定されています。
同じ様な医師が応募していた場合に、無いと負ける可能性が高い
全く同じ内容のキャラで専門医持ちと専門医なしが同時に求人に応募してきたら、あなたならどっちを採用するでしょうか?
僕なら持っている方を採用します。
他の要素が全く同じ評価ならば、最終的にわざわざ持ってない医師を選ぶことはないでしょう。
現役フリーランス医師のおるとの考察
私はフリーランスの医師としてかれこれ数年働いていますが、専門医や認定医は持っていて損はないと考えます。
特に「専門医直前だけど、やっぱいらないかな......?」なんて悩んでる先生は、絶対とる様にしましょう。
採用側としては、もちろん優秀な医師を採用したいと考えているでしょうが、それ以上に「変なキャラクターの医師を採用したくない」ということも考えてます。
専門医を取得するのが主流である現在の医療界において、「持っていない」という事態は、それだけで相手に「なんで?変な考え持ってる?」と疑問を沸かせる結果になりますし、正当な理由がないと面接を落とされる一因となってしまうかもしれません。
専門医や認定医などは、患者や医療機関側に対して「私はこの様な医師です」という証明であって、自身に直接的な利益をもたらすものではありません。
資格をとった後に更新をし続けるのはさほど困難ではありませんが、ある程度の学年になってから「欲しい!」と思っても、そこから取得するのは極めて難しいでしょう。
また、今後フリーランスが増えていく可能性は大いにありますが、その時に使える武器は少しでも多い方が良いでしょう。
取れるチャンスがあるなら取っておきましょう!
フリーランスが気になる先生はいつでも僕に相談してくださいね!
あと求人を見てみるのも楽しいですよ!