このブログを見ている医師の方のほとんどは、医療機関で勤務されている方がほとんどかと思います。
実際に医師全体で見ても9割以上は医療機関で勤務しているのですが、もちろんそれ以外にも医師の働き方は存在します。
というわけで、今回は臨床以外での医師の働き方について代表的なものを紹介していきます。
臨床以外での医師の転職の選択肢は?
産業医に転職する
産業医とは、事業場での労働者の健康管理などについて、専門的な立場から指導・助言を行い、心身の健康管理を行う医師のことです。
労働安全衛生法によって、一定規模の事業場には産業医の選任が義務となっています。
産業医の業務に関しては、労働安全衛生規則 第14条 第1項に規定されており、具体的には次の事項で、「医学に関する専門的知識を必要とするもの」と定められています。
- 労働者の健康診断
- 面接指導
- カウンセリング
- 月1回以上の職場内巡視
- 労働環境改善に関する助言
- 労働者への健康教育
- 職場内での健康被害についての調査
などなどが主な仕事内容となります。
そのため、産業医には医学的な知識だけでなく、労働衛生に関する幅広い知識も求められます。
産業医になるためには、日本医師会認定産業医制度で規定された所定の研修を修了する必要があります。
研修は地域の医師会や産業医科大学、自治医科大学などで開催されています。
産業医の資格はある程度まとまった時間がないと取得は難しいのですが、代わりに取得さえできれば一生使える資格となります。
勤務内容としても、オンコールや呼び出し、日当直もなく、週休3日以上のケースも少なくありません。
バリバリ仕事をこなすこともできるし、QOLを重視する医師にも向いている働き方ではないでしょうか。
介護老人保健施設の医師に転職する
介護老人保健施設は、高齢者の介護・看護・リハビリなどの医療的なサービスを提供する要介護状態の高齢者向きの施設です。
これは介護保険法第8条第28項により定められた、厚生労働省が管轄するサービスとなり、最低1名以上の常勤医師の在籍が必須とされています。
日本では高齢化社会に伴い、介護老人保健施設数が増加しており、今後も医師の需要がますます高まっていくことが予想されます。
介護老人保健施設での勤務は、入所者の健康管理と治療が主体となります。
入所者の疾患を幅広く診察できるスキルが必要となり、専門科の知識だけでなく、総合診療科に近い、幅広い医学知識が必要になります。
また、勤務医として働く場合や、施設長として経営などに関わる場合もあり、待遇は一般的な臨床医よりも良いことが多い傾向にあります。
ただし日当直やオンコールが必須とされる施設もあり、入所者が急変した場合呼び出されることもあります。
ただ施設でできる医療というのはある程度限られているため、入所者の急変時に対応が困難な場合などは、近隣の病院へ転送するということがほとんどとなります。
製薬会社のメディカルドクターに転職する
製薬会社にはメディカルドクターと呼ばれる、医学的な面から業務に携わる医師がいます。
主な業務内容は、
などなど、薬の安全性や有効性に関する面を評価する仕事がメインです。
日本においては冒頭で前述した通り、臨床で働く医師がほとんどとなり、知名度は正直あまり高くありませんが、欧米などでは製品や領域ごとにそれぞれの専門の医師が配属されているような製薬会社も珍しくはありません。
メディカルドクターに転職するためには医師としての医学知識はもちろんのこと、疾患・新薬に関する深い知識、統計処理やプレゼテーションなどの能力も必要となります。
そのため初期研修が終わってすぐ転職というよりは、ある程度臨床を数年以上やり、あるいは専門医などを取得した上で転職する方が無難でしょう。
また、海外の企業や研究機関と英語でやり取りをすることもあり、論文なども読まなくてはならないため、総じて英語のスキルが重要となってきます。
製薬会社によっては英会話のトレーニング制度を導入しているところもありますが、英語の能力は高ければ高いに越したことはありませんよね
労働環境は比較的恵まれており、日当直やオンコールはなく、フレックスタイムや在宅勤務、専門医資格維持のため臨床との兼業などを認めている企業もあります。
そのため、育児中の医師などの私生活を重視する医師も勤務しやすい環境となります。
待遇は企業によって異なりますが、かなり高額な場合も少なくありません。
新しいことに挑戦してみたい医師や、新たなものを作り出すことに喜びを感じる医師なら、転職先として検討に値するでしょう。
公務員の医師に転職する
医師が公務員として働く職場として最も多いのは、所長が医師でなければならないことが定められている保健所となっております。
また、省庁・都道府県庁、地方衛生研究所などの研究機関などでも、研究や医療行政を担当する医師が勤務しています。
市町村などの公的機関が運営する、いわゆる公立病院などで臨床医として働く場合も厳密には公務員扱いとなりますが、今回は割愛させていただきます。
公務員として働くうえでは、医学知識のほかにも行政職として法律知識などが求められる場合もあります。
公務員医師は福利厚生がしっかりしており、食中毒や感染症などの緊急事態以外では緊急呼び出しや時間外勤務がほぼなく、有給休暇も取得しやすくなっております。
待遇は一般的な臨床医よりもやや低い傾向にあります。
しかし公務員での副業、いわゆるバイトに関しては国家公務員法と地方公務員法に規定があります。
国家公務員法では、
私企業からの隔離(国家公務員法 第103条)
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。他の事業又は事務の関与制限(国家公務員法 第104条)
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。引用:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000120
と定められております。
また地方公務員法では、
職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
引用:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000261
と定められております。
ちなみに理由としては
信用失墜行為の禁止(国家公務員法 第99条)
職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。秘密を守る義務(国家公務員法 第100条)
職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。職務に専念する義務(国家公務員法 第101条)
職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。
というものが挙げられます。
そのため自分の生活環境と給与とをしっかり考えていただいて転職を決断するようにしましょう。
医療系の起業に医師として参加する
医師は医療を提供する側ばかりではありません。
例えばいまだに紙の診察券やカルテ、電話での予約などを用いていたりなど、まだまだ医療の現場は効率化が進んでいないところはたくさんあります。
そのような非効率的な領域に対して、医師が利用者の目線を持って医療サービスの会社で起業するというケースが増えてきております。
またそれ以外にもAIと画像や検査所見などと組み合わせた診断ほぞ技術や、生活指導などに関するアプリ、外来の予約などのWebシステムの開発など、医療とITを掛け合わせた領域への進出は幅広く見られます。
医療系の企業は現在のトレンドといっても過言ではないレベルで増えてきていますが、これには医師自身がメインとして起業するケースと、医学知識を必要とする企業に医師として雇用されるケースがあります。
内容としては医学知識以外にプログラミングなどの技術が必要とされることも少なくありませんが、基本的にはプログラミング用に技術者も雇用されていることがほとんどでしょう。
待遇は企業によって異なりますが、作成したものがヒットすれば、莫大な稼ぎが得られるかもしれません。
医師としてメディアで露出して働く
最近では医師として働く一方、タレントとしても働く場合なども珍しくなく、プロダクション側も文化人タレントを欲している傾向にあります。
中には医師を百名単位で登録しているようなところもあります。
また事務所などに所属をしなくても、YouTubeや配信サービスなどで露出を図り、メディアとして利用して働く医師もちらほら存在します。
ただこのような働き方の医師の大半は、本業は医師として働き、あくまで副業としてやっている方が多い傾向にあります。
よほどメディアに露出しているならばまだしも、最初からyoutuberなど一本で生活していくというのは流石に収入面など不安定すぎるので、本業にするのは相当の覚悟が必要でしょう。
なぜ臨床以外に転職せず働く医師が多いのか
医師が臨床でばかり働いてしまう理由は一体なんなのでしょうか?
僕個人の考えとしては、
- 転職の選択肢としてそもそも知らない
- 治療行為をしたいから医師になった
- 医業以外を行うのは邪道だと考えている
などが理由として考えられるのではないかと考えます。
近年、特に若手の中では医業に対してやりがいを強く求めるという層が、昔に比べて減ってきているのではないかという印象を受けます。
医師は医師免許を持っている人間というだけで、別に医師として働かなければならないという決まりはなく、生き方は様々あります。
かの手塚治虫氏も医師免許取得後に漫画を描いていた訳ですし、いくつもの名作を残しています。
医師が転職して臨床以外で働く選択肢のまとめ
医師は臨床現場だけでなく、そのほかの様々な分野で活躍することも可能です。
転職に関しては産業医、介護老人保健施設の専属医師、メディカルドクターなどは、医師転職サイトを利用して転職することが可能になります。
また臨床だけにこだわる必要は全くなく、そのほかにいろんな選択肢も広がっています。
まずは転職を考えてみるのも悪くないかもしれませんね!
常勤医として転職したい場合
が上から順におすすめ!