2019年12月より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、世界中に感染の猛威を奮っております。
日本においては外出自粛や、在宅勤務などが推奨されていますが、なかなかそうもいかず失業している方々が非常に増えています。
そんな中もちろん医療業界でも、非常勤バイトの消滅や自粛を求められる医師がちらほら出てきました。
この場合、医師はいきなり給与がなくなってしまうのでしょうか?
今回の記事では知っておくべき法律と、対処について解説します。
非常勤バイトは医師と医療との間の雇用契約
常勤とは1日8時間、週40時間以上で週5日以上勤務している労働者のことを指します。
一方で非常勤とは、週所定時間の中から勤務日数、勤務時間を決定し勤務している労働者を指します。
両者とも雇用に関しては、労働基準法に基づいて契約を交わし、労働するという形になります。
つまりバイトの医師といえども解雇する場合や休業を指示する場合は、ちゃんと法律に則って解雇が行われる必要があるのです。
残念なことに医師の世界では、ここがしっかり徹底されているものはあまりに少ないでしょう。
新型コロナウイルス感染症と非常勤バイトのトラブル例
医師本人が新型コロナウイルスに感染した場合
最近では医師本人が新型コロナウイルス に感染してしまうケースも少なくありません。
医師本人が新型コロナウイルスに感染した場合は、
新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。
なお、被用者保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。
具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されます。
具体的な申請手続き等の詳細については、加入する保険者に確認ください。
引用:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-1
すなわち雇用側から休業手当は支払われることはなく、自身の被用者保険からの傷病手当金をあてにするしかないという形になります。
医師が感染が疑われ、雇用側から休業を促される場合
例えば自分の配偶者や、医局で隣の医師が感染してしまったなどの場合が、これに該当します。
この場合、医師はあまり体調不良を訴えることがなく、一見勤務可能な状態であることが多いです。
職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。
引用:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-1
つまり医師は自分が新型コロナウイルスに感染していなければ、休業手当をもらうことが可能になります。
なお休業手当に関しては労働基準法第26条に定められております。
休業手当とは?
雇用側の都合により労働者を休業させた場合、休業させた所定の労働日に関しては、過去の平均賃金の少なくとも6割以上の手当(休業手当)を支払わなければなりません
「使用者の責に帰すべき事由」による休業
↓
1日当たりの休業手当=平均賃金×60/100
↓
労働者に対し支払義務あり
つまり自分に原因がない場合は休業手当が支給されるということになります。
これは労働者の権利ですので、支払われない場合は労働基準法違反となります。
医師の感染疑いはないが、外勤休業を宣告された場合
例えば感染者の多い地域や病院で勤務している医師に対して、医療機関側から「うちに新型コロナウイルス感染症を持ち込む可能性があるから非常勤バイトに来ないでくれ」と言われるような場合があります。
この非常勤バイトが休業、いわゆる一時的な措置である場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまることとなり、休業手当をもらうことができます。
つまり支給されるのは過去の平均賃金の少なくとも6割以上の手当となります。
休業手当については前項「休業手当とは?」をご参照ください。
患者数減少に伴い、外勤消滅を宣告された場合
患者数が減少した場合、非常勤医師を雇っていても赤字になるだけの場合、外勤自体が消滅、いわゆる「解雇」となってしまうことがあります。
ただ解雇にもいろいろ法的なルールがあるので、今回の新型コロナウイルス感染症の場合どうなるかを知っておきましょう。
一般的に、雇用者を解雇する場合は30日前までにその予告をするか、最低30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払うことが必要となります。
これは週1日しか出勤しないような非常勤バイトであっても、解雇予告がなかった場合は最低30日分の解雇予告手当が支払われる必要があるのです。
ただし従業員に重大な非があるとき、または天災地変等により事業の継続が不可能になった場合は、事前に労働基準監督署長の認定を受ければ即時解雇しても解雇予告手当の支払いは必要ないとされています。
そのためクリニックが閉業などに追い込まれ、同時に非常勤バイトが消滅に追い込まれてしまった場合などは解雇予告手当ての支払いはないと考えた方が良いでしょう。
新型コロナウイルス感染症で医師が外勤に制限をかけられたら?まとめ
現在流行中の新型コロナウイルス感染症で非常勤先とトラブルになってしまった場合の金銭的な法律について紹介させていただきました。
医師の非常勤バイトは、特に大学病院勤務などの場合は生命線であると言っても過言ではありません。
自分の生活は自分でしっかりと守っていくようにしましょう。
もしも自分に感染の疑いがなく、なおかつ非常勤バイトがなくなって困っている場合は、なんとかスポットバイトでも探して繋いでいきましょう。