医師の転職について書いているサイトやブログを見ると、どれも医局をやめよう!転職しよう!という記事ばかり目立ちますよね。
そのようなサイトはただ転職をさせたいだけであり、あなたのキャリアについて真剣に考えていません。
僕は実際に医局を辞めた立場であり、医局に所属することに対するメリットもデメリットも知っているつもりです。
今回は医局所属のメリットを考え、医局を辞めないという選択肢について考えてみます。
医局とはなんなのか?
医局とはそもそもいったいなんなのでしょうか?
医局とは、主に大学医学部・歯学部・病院等においての各「研究室」、「診療科」、「教室」ごとのグループ組織のこと。
医学部の教授を中心とした講座、大学付属病院の診療科を中核とする医師の集団を指すことが多く、周辺として関連病院等の医師も含めた一大グループ組織であることが多い。
法令上、予算上位置づけられた組織、仕組みではない。
という風にWikipediaには記載されていました。
要するに教授を頂点として医局員が集まり、指導・研鑽・研究・人材派遣を行う組織と考えると良いでしょう。
医局はもともと、
- 診療科の診療方針全般
- 関連病院の人事について決定権
- 治療薬の選択
- 医療機器の導入
- 関連病院の管理
などなど幅広い分野で大きな影響力を持っていました。
医局ごとの独立性が強い上に他の医局との連携も悪く、権力が強くなりすぎてきたため長年批判の対象となっており、今までも改革がなんども行われてきました。
その改革の効果もあってか、医局の影響力というのは年々衰えてきましたが、まだまだ力はあります。
さらにはこれだけ批判の的になってきた医局も、もちろんメリットがあるから今までやってこれたわけです。
ではメリットとはいったいなんなのでしょうか?
医師が医局に所属するメリットとは?
医局に所属するメリットなんかあるの?と聞かれたら、僕は間違いなくあると答えます。
パッと思いつくのは、
- 大学院に入り、学位を取得できる
- 専門医などの資格取得がしやすい
- 留学や研究、専門性の高い医療ができる
- 医師としての人間関係が拡がる
- 医局が医師個人を様々な面で守ってくれる
- 比較的条件の良い非常勤勤務やアルバイトがある
- 子育てに対し配慮してくれる
などになります。
1つずつ解説していきましょう。
大学院に入り、学位を取得できる
大学病院で医局に入ることによる一番のメリットは、医学博士(学位)が取得できるということでしょう。
学位授与は教授でないとできないため、医局に所属しなければ学位も取得できないということになるのです。
では医師にとって学位とは果たしてなんのために必要なのでしょうか?
一般に大学病院の講師以上、国公立病院の部長職、一部企業病院の部長職には、学位がないと昇進することができません。
現在では大学病院に進む割合も減ってきており、またキャリアを積みたいと考える若手も減少してきており、学位取得者が少なくなってきた傾向にあり、学位自体の希少価値は高まってきています。
勤務医の中で上を目指すためには必須だと考えて良いでしょう。
しかし一方で、病院やクリニックなどの求人では、医学博士の有無が条件となることはほぼありません。
そのため、臨床を中心に働いている医師には、学位取得自体にはあまりメリットはないといえます。
また、特に意味はないけれどなんとなく医学博士の取得を目標としている場合は、博士号を取得してしまうと目標達成となってしまい、その後医局をやめてしまうという医師も少なくありません。
専門医などの資格取得がしやすい
専門医を取得したいと考えている医師は、医師全体の9割以上とも言われています。
医局に所属をしていると、専門医の申請に必要な症例が集めやすいというメリットがあります。
また医局側としても、医局員に専門医試験に落ちられたりすると困るため、専門医の勉強などでも配慮してくれることが比較的多い傾向にあります。
また、新専門医制度では基幹病院を中心として複数病院で研修するプログラム制が基本となります。
基幹病院には、大学病院や症例の豊富な地域の中核病院などが指定されているため、専門医取得にはまだまだ医局は強いのではないでしょうか。
一方で、専門医をとってさえしまえば、維持するのに医局は絶対に必要というわけではなくなります。
そのため専門医取得と同時に医局を離れる医師が多いのは、これが理由として考えられます。
少々恩知らずな感じが否めませんが、自分の人生は有限ですので、何を優先すべきか考えて行動しましょう。
留学や研究、専門性の高い医療ができる
大学病院で医局に所属することにより、留学や基礎研究をすることが可能になります。
逆にいうと、大学病院にいないとこの二つはほぼできないと言っても過言ではないと思われます。
留学や研究がしたい場合は医局に残るのが手っ取り早くて良いでしょう。
また大学病院では採算を度外視した最新設備や、一般病院では遭遇しないような希少な症例なども集まるため、そのような意味でも得られる経験は多く、専門性の高い医療に触れられるのではないでしょうか。
ただ、大学病院以外でも最新設備や希少な症例を扱っている大病院は存在しますので、こちらに関してはしっかり病院を探せばある程度なんとかなる可能性はあります。
気になる場合は知り合いに聞いてみたり、医師転職サイトのエージェントに聞いてみましょう!
医師としての人間関係が拡がる
医局に所属していると、上級医からの指導を得られたり、後輩を指導したりなどの縦のつながりから、関連病院への派遣や学会などの懇親会など、横のつながりまで増えていきます。
さらには医局のネットワークを使うことで、海外の医師と知り合うことができたり、将来自分が専門としたい分野につながる人脈を得られたりすることもあります。
このような人と人とのつながりというものは、お金で得られるものではありません。
また、自分の患者を他の医師に紹介受診させる場合などに知り合いの医師が相手の場合は、専門や力量がわかっているためより的確に紹介することが可能となります。
個人的に連絡を取れる場合などはより細かな相談ができることでしょう。
この場合は患者も安心感をより感じてくれる場合が多くなっています。
医局が医師個人を様々な面で守ってくれる
医局に所属していると、給料は薄給であることが多い反面、多少できない医者でも医局から放流せず面倒をみてくれたりしますので、仕事を失わないという強い安定感があります。
また何かトラブルがあった場合にも、医局員の失敗=医局のミスとつながりかねないため、医局が全力でかばってくれる場合も多いです。
そのほかでは医局派遣の非常勤バイトなどで、医療機関から不当な要求を突きつけられたとしても、医局が同様に守ってくれることが多いです。
どこの組織にも所属していないフリーランスの医師などは、このような恩恵を受けることはもちろんできません。
開業医に至っては、従業員たちをトラブルから守る立場になります。
ただ安定した雇用という点については、医師自体の求人はインターネットでかなり多く出ており、医局以外でも転職先を見つけやすい現状ではよほどのことがない限りは医局派遣に頼らなくても生活はできます。
比較的条件の良い非常勤勤務やアルバイトがある
大きな医局の場合は、定期非常勤やバイトに関してかなり厳選している場合も多く、全体的にある程度質が保たれる場合があります。
また、上級医は特別に自分で交渉したようなワリの良いバイトを持っていたりして、その日に都合が悪かったりすると、こちらに運よく回ってくる場合もあります。
このようないい案件をラッキーで勤務することができた場合、その病院とのつながりを作ることもできますよね!
ただすべての医局がいいバイトを持っているかというとそんなこともなく、医局なのに医師転職サイトを間に挟んで医局員にバイトをさせている医局などもあります。
医師のバイトサイトにもいい案件が落ちている場合は多く、自分で探せる人はどちらでも大差ない可能性はあります。
子育てに対し配慮してくれる
これは確実ではありませんが、医局に所属している医師の全体数が多いため、子育てなどでの休職時の体制を組みやすかったり、時短などの希望つきの職場復帰に関して融通を利かせてくれたりといった対応をしてくれる場合があります。
しかしあまり子育てに理解のない医局に入ると、妊娠がわかった時点で嫌がらせのような扱いを受けたり、なかなか休ませてもらえないこともあります
そのため、子育て関連に対する配慮を期待する場合は、入局してから「配慮されない!」なんて喚いても時すでに遅しなので、あらかじめ見学などの時点でそこら辺の話をしっかり聞いておく必要があります。
必ず見学などに訪れる場合は、自分がどういう待遇を必要としているのかを明確にして挑むようにしましょう!
医局を辞めない選択肢!医局のメリットを考えるのまとめ
医局に所属することにはさまざまなメリットも存在します。
多くのメリットの中で個人的に一番だと感じたのは、医局に入ったことによる人間関係の拡がりです。
円満に医局を退局したことにより、現在も医局員とは交流を持っていますし、関連病院でも働いています。
少なくとも医局は完全な害悪ではありません。
メリット、デメリットを考えて、しっかり自分のために有効活用できるようにしましょう!
もしも医局をやめるときは参考にしてください!